引き続き、電験三種の過去問を解いていきたいと思います。
4月の段階では、ひとまずある程度の公式を頭に入れるため、簡単な計算で解けそうな問題を中心に選んでみようと思います。
今日は機械の誘導電動機の問題です。
なお、問題文については、一般財団法人電気技術者試験センターの以下のサイトで公開されている文章を引用します。
問題
【問題】平成28年度第三種電気主任技術者試験 機械科目 問4
問4 定格周波数 50Hz, 6極のかご形三相誘導電動機があり,トルク 200 N⋅m,機械出力 20 kWで定格運転している。このときの二次入力(同期ワット)の値 [kW] として,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1) 19 (2) 20 (3) 21 (4) 25 (5) 27
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https://www.shiken.or.jp/answer/index_list.php?exam_type=30
検討
さて、どうでしょうか?
機械出力 20 kWって言ってるけど、普通に考えると入力のほうが大きそうだね。(3)~(5)から選べば3分の1で当たるかな?
まあ、まだ誘導機の問題も初めてですので慣れないと方針すら立たないですよね。
とりあえず誘導機のイメージをしてみましょう。
誘導機は固定子と回転子の部分があります。
固定子は回転子の周囲を囲んでいて交流電流が流れて回転磁界を発生させる部分です。
回転子は固定子の磁界によって回転しますが、その回転速度はすべりが発生することにより回転磁界の速度よりは遅くなります。
解答
さて、あらためて問題文を見てみましょう。
「二次入力」という表現がありますが、ここでの一次、二次は固定子側と回転子側を指します。
固定子のほうは、「定格周波数 50Hz, 6極のかご形三相誘導電動機」と言っています。この誘導機で使っている交流電流の周波数が50Hzで、磁極が6個あるんですね。
回転子のほうは、「機械出力 20 kWで定格運転」しています。
ただ、求める答えは、二次入力(同期ワット)の値 [kW] です。回転子は実際には20kWの運転をしていますが、この問題では、すべりを考慮しない二次入力の値を求めることになります。
さて、二次入力(同期ワット)とトルクの間には次の関係があります。
二次入力(同期ワット)を\(P_{2}\)、同期角速度を\(ω_{s}\)、トルクを\(T\)とすると、
$$P_{2}=ω_{s} \times T$$
この中でトルクは問題文に与えられていますので、同期角速度さえわかればこの問題は解けます。
一方、この交流電流の周波数を\(f\)、回転磁界の回転速度を\(N_{s}\)、極数を\(p\)とすると、
$$N_{s}=\frac{120f}{p}$$
となります。周波数の単位が\(s^{-1}\)なのに\(N_{s}\)が分速になっていることに注意して下さい。極数には正と負があるので60秒の2倍になるイメージです。
ということは、この問題での同期速度は
$$N_{s}=\frac{120 \times 50}{6} = 1000[m/min]$$
となります。
交流電流は50Hzか60Hzとして出題されることが多いでしょうから、徐々に問題を解き慣れてくると、この分速などは一目見て出せるようになるのかもしれません。
そして、速度がわかれば角速度も計算できますので、同期角速度は
$$\omega_{s}=\frac{2\pi N_{s}}{60} = 104.7[s^{-1}]$$
となります。
わざわざ分速に直してから秒に戻す意味はあるのでしょうか?
ちょっとそこは今の私には何ともいえないです。
熟練すれば単位変換を省略することも出来るかもしれませんが、電気初心者の私にはその弊害が見えませんので、流儀に従っておきます。
ともあれ、二次入力(同期ワット)\(P_{2}\)は以下のようになります。
$$P_{2}=104.7[s^{-1}] \times 200[N・m] = 20.9[kW]$$
- 解答:3
あれ? 結局、機械出力 20 kWって使ってない?
そうですね。「すべり」が絡んだり二次側の計算問題では使うでしょうけど、そこは後日にしようと思います。
今日は以上となります。ここまでお読み下さりありがとうございました。
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