ちょっと小耳に挟んだのですが、一部で「三角関数」不要論が盛り上がっているそうですよ。
三角関数かー。高1でsinとかcosとかの三角比を習って、高2で色々な公式とかを習うんだっけ?
理系に進む人にとって三角関数が重要なことは言うまでもありませんが、文系の人には確かに不要な気もしますよね。
それを言ったら、古文・漢文とか歴史とかだって、理系の人は使わないと思うよ。でも、高校のカリキュラムでやることになってるんだし……
意見の相違はあると思いますが、ここは個人ブログですので、今日は高校数学の三角関数について個人的な見解を聞かせてもらいましょうか?
はい了解です。
まあ私は理系で高校数学には一通り触れてきましたが、三角関数は「世の中の多くの人は使わないけど非常に重要な概念」という、微妙なポジションにあります。
高校生全員が触れる必要があるのか、少し考えてみることにしましょう。
高校の学習内容が、社会人になってから役立つかどうか
そもそも、高校で学ぶべき内容はどんなものか、という前提を考えてみましょう。
高校は義務教育ではありません。
「全ての人に必要な内容」は、義務教育の中学までに履修させるべきです。
なお、工業高校・商業高校などのカリキュラムには、専門的な科目が多くなってると思われます。
正直、専門科目はよくわかりませんので、大学を目指すような高校の「普通科」を前提に考えてみます。
大学を目指すなら、どうしても「入試」ありきになってしまうのですが、ひとまず入試は度外視してみます。
入試を度外視すると、高校の普通科で履修する科目で、社会に出てから直接的に役に立つ科目はかなり少ないと思われます。
例えば、英語は重要な科目と思われがちですが、(私を含め)英語が出来なくても問題なく社会生活を送れている日本人は大勢いるでしょう。
国語についても、古文・漢文はもちろん、高校で習う難しい評論文が読めなくても、生活する上では支障ないでしょう。
もちろん、数学・理科・社会(地歴)あたりの科目も、それぞれ一部の人のとっては確かに重要ですが、「大多数」の人にとっては、社会人になったら忘れ去られる内容が多いと思われます。
まあ、「高校で習った内容の多くが現実に役に立っている」と言いきれる人は、多数の科目を担当する塾講師や資格マニアくらいのものだと思います。
ですが、必ずしも直接的な役に立たなくても、こういった多くの科目を学ぶことで「世の中の人間社会や自然はこう成り立っている」という基礎知識を身につけることが出来ます。
役に立たないかもしれないけど、もし必要になった時にその分野を理解するための基礎知識。
「教養」とでも言うんですかね。
直接その分野には進まないかもしれないけど、「現在の社会や自然ではこういった知識が使われているんだ」という概念を知っておくのは割と大きな意味があると思うんですが、どうでしょうか。
高校数学のカリキュラムはよくできている
さて、理系の分野に進む場合、どの分野でも「数学」が基礎になります。
高校数学で習う内容は、その理系の基礎となる内容がコンパクトに詰まっています。
三角関数もその一つです。
物理、工学を中心に、「sin、cos」を知らないと話にならない分野は非常に多いです。
それほど重要な概念を高校で全く触れない、というのはちょっともったいない気がします。
対数も重要ですね。
化学のphなどでも使いますが、統計を中心に、文系の人でも知っておいて欲しい概念だと思います。
微分・積分も、物理・統計など様々な分野で使われます。
私は以前、「数列」だけはパズル的なもののように見えて役に立つのか疑問だったことがあったのですが、当時の私は無知でした。微分・積分と密接に関係してますし、何なら金融関係でもそういった計算は使います。
こうしてみると、専門家が作り上げただけあって、高校の数学で習う内容は重要な内容ばかりが綺麗にまとまっていると思えます。
しいていえば「因数分解」ですかね。因数分解がどういった分野で役に立っているのか私はよく知りません。もちろん二次方程式や高次方程式を解く時には役立ちますが、必要が生じた場合でも、因数分解よりも解の公式のほうがまだ汎用的です。
とはいえ、難しい計算公式が必要かというと……
高校の数学は重要な概念が詰まっています。
三角関数も、対数関数も、微分・積分も、高校生であれば、文系の人でも「それらがどういった概念か」くらいは触れていて欲しい気はします。
しかし、「大学入試のような難しい問題を全員が解けるべき」かというと、そうは思いません。
三角関数の概念、グラフの形や性質くらいは知っておいて損はないと思いますが、二倍角の公式や半角の公式を使って難しい計算が解けるべきかと言われると、それはさすがに不要だと思います。
微分・積分の難しい計算が全員に必要だとは思えませんが、微分・積分を全く知らないで良いかというと、それもどうかと思います。
どうも高校普通科のカリキュラムは「大学入試ありき」になってしまいがちで、「全く触れない」か「入試に対応できるよう深く学ぶ」かの二択になってしまいがちのように個人的に思います。
時間をかけて難しい問題が解けるようになる以外にも、さわりだけを学ぶ、という選択肢もあっても良いのではと思います(実際にはそのような科目も存在するのかもしれませんが、マイナーなように感じます)。
まあとはいえ、「入試に対応する難しい内容は無いけど、数学の基礎的なエッセンスをコンパクトに教えるよ」といった科目が出来たとして、それを高校が採用するか、生徒が受けたがるかというと、なかなかそうもいかないでしょうね。
まとめ
三角関数は、というより高校数学は、理系を中心とした各分野にとって重要な内容だと思います。
直接的に役に立つ可能性は低いでしょうけど、「世の中でこういった知識が使われているんだ」という教養として、高校生には学んで欲しい内容だと思います。
ただ、難しい公式を使って大学入試問題を解くようなレベルまで強制する必要はないと思います。
そういった重要な知識の「さわり」だけ学べるようなシステムが現実的に可能であれば良いのですが……
本日は以上となります。ここまでお読み下さいましてありがとうございました。