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目的条文の給付の種類の順序には意味がある【独学での合格を目指す社労士試験勉強ブログ】

社労士試験

今日は目的条文です。
労災や健康保険などの目的条文には、保険給付(国民年金の場合のみ給付)の種類が並んでいます。

  • 労災 ⇒ 負傷、疾病、障害、死亡等
  • 健保 ⇒ 疾病、負傷若しくは死亡又は出産
  • 国保 ⇒ 疾病、負傷、出産又は死亡
  • 国年 ⇒ 老齢、障害又は死亡
  • 厚年 ⇒ 老齢、障害又は死亡

並びだけを見るとばらばらに見えますね。


しかし、法律の条文は専門家が作った文章。
一語一語に意味があります。


今日はこの給付の順序の意味を解釈してみましょう。


記事の内容

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目的条文の給付の順序の意味を解釈する

想定する読者

  • 1週間前の自分自身(社労士受験生)
  • 私と同じような社労士受験生

「若しくは」と「又は」の優先順位

さて、健康保険法から始めます。

健康保険法は、労働者又はその被扶養者の業務災害以外の疾病、負傷若しくは死亡又は出産に関して保険給付を行い、もって国民の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とする。

法律の文章で、並列に並べる場合に使う「若しくは」と「又は」には、使い分けのルールがあります。


「又は」で区切るのが基本ですが、「又は」で区切られたものをさらに細かく区切る場合に「若しくは」を使います
「又は」が大きな語句、「若しくは」が小さな語句になります。

健康保険法では「 疾病、負傷若しくは死亡又は出産 」と、「若しくは」と「又は」が混在しています。なぜでしょうか。


疾病、負傷若しくは死亡出産は別扱いだからです。


ここの「疾病、負傷若しくは死亡」は、その前の「業務災害以外の」から続いています

つまり、次のように分割して解釈する必要があります。

「労働者又はその被扶養者」の「『業務災害以外の疾病、負傷若しくは死亡』又は出産」に関して保険給付を行い

業務災害の負傷、疾病、死亡は労災のほうで保険給付が行われて、業務災害以外の疾病、負傷、死亡が健康保険法のほうで保険給付が行われます。


「出産」には業務災害などありませんので、別のものになります。

英文法や古典の文法を勉強しているみたいですが、法律の文言も深く考えられて作られているので解釈してみると面白いです。
ただ、試験対策という点からいうと、深みにはまるのは効率悪いのでおすすめはできませんね。

並列に並んでいる場合の優先順位

続いて、労働者災害補償保険法と国民健康保険法とを見てみましょう。

労働者災害補償保険は、業務上の事由、事業主が同一人でない二以上の事業に使用される労働者(複数事業労働者)の二以上の事業の業務を要因とする事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して迅速かつ公正な保護をするため、必要な保険給付を行い、あわせて、業務上の事由、複数事業労働者の二以上の事業の業務を要因とする事由又は通勤により負傷し、又は疾病にかかった労働者の社会復帰の促進、当該労働者及びその遺族の援護、労働者の安全及び衛生の確保等を図り、もって労働者の福祉の増進に寄与することを目的とする。

国民健康保険法は、国民健康保険事業の健全な運営を確保し、もって社会保障及び国民保健の向上に寄与することを目的とする。
国民健康保険は、被保険者の疾病、負傷、出産又は死亡に関して必要な保険給付を行うものとする。

国民健康保険法は第二条も引用しています。

  • 労災法:「労働者の負傷、疾病、障害、死亡等」
  • 健保法:「疾病、負傷若しくは死亡又は出産」
  • 国民健康保険法:「疾病、負傷、出産又は死亡」

健康保険法は階層構造になっているのでやや違いますが、同列になっている「負傷、疾病、障害、死亡」の中でも順序が微妙に違うのがわかります。


これは、その法律で目的とする対象の、重要な順に並んでいると思われます。

労災法の対象は負傷が最も重要で、健保法や国民健康保険法の対象では疾病が最も重要です。

これはイメージしやすいのではないでしょうか。

労災は業務災害などの保険給付がメインですが、業務災害で発生するのは病気よりは怪我のほうが多そうです。
だから「負傷」です。


労働安全衛生法でよく出てきた「危険または健康障害」という文言でも「危険」が先になっていますが、労働していて発生するのは病気よりも怪我のほうが多いです。

それに対して、普通に病院や診療所にお世話になるのは、病気のほうが怪我や事故よりもずっと多いですよね。
なので、健康法・国保法は「疾病」が最優先になります。

なお、出産と死亡の前後関係は難しいところですが、死亡が後になっているのは、健保法や国民健康保険法での死亡は埋葬料や葬祭費くらいだからでしょうか。


まあ、深く考えずに「死亡は一番最後」と一律覚えるのが簡単ではあります。

続いて国民年金法と厚生年金保険法です。

国民年金制度は、日本国憲法第二十五条第二項 に規定する理念に基き、老齢、障害又は死亡によって国民生活の安定がそこなわれることを国民の共同連帯によって防止し、もって健全な国民生活の維持及び向上に寄与することを目的とする。

厚生年金保険法は、労働者の老齢、障害又は死亡について保険給付を行い、労働者及びその遺族の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とする。

国民年金も厚生年金も、「老齢、障害又は死亡」の順序になっています。社労士試験勉強の予備校や参考書等で学習するのもこの順序ですよね。

年金で、「老齢、障害又は死亡」の3つの中で一番重要なのは、やはり老齢年金ということでしょう。


昭和36年に国民皆年金がなぜ行われたかを考えると、高齢化が徐々に進む中で、老後の所得保証を求める声が強まったからです。

障害も所得保証ですが、「障害等級に該当する人」のみの所得保証なので優先順位は下がります。

障害年金と遺族年金のどちらが優先されるかは微妙ですが、死亡については遺族に対する保証なので、本人に対する保証のほうが目的としては優先ということでしょう。

優先とはいっても、文言上は並列で、ただ記載の前後が違うだけですが……

船員保険法

船員保険法は、船員又はその被扶養者の職務外の事由による疾病、負傷若しくは死亡又は出産に関して保険給付を行うとともに、労働者災害補償保険による保険給付と併せて船員の職務上の事由又は通勤による疾病、負傷、障害又は死亡に関して保険給付を行うこと等により、船員の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とする。

船員保険法の前半は健康保険法とほぼ同じです。


船員又はその被扶養者の職務外の事由による疾病、負傷若しくは死亡又は出産の文言は
「船員又はその被扶養者」の「『職務外の事由による疾病、負傷若しくは死亡』又は出産」
となります。

後半は難しいところですが、
船員の職務上の事由又は通勤による疾病、負傷、障害又は死亡
には、「若しくは」がなく、階層構造ではありませんので、

  • 船員の「職務上の事由又は通勤」による「疾病、負傷、障害又は死亡」

となります。

さて。労災では負傷、疾病の順でしたが、船員保険法ではなぜ疾病、負傷の順になっているのでしょうか。

これは、船員保険法で給付される休業手当金の目的が絡んできます。

休業手当金は、被保険者又は被保険者であった者が職務上の事由又は通勤による疾病又は負傷及びこれにより発した疾病につき療養のため労働することができないために報酬を受けない日について、支給する。

となっていて、「疾病」および「負傷およびこれにより発した疾病」という表現により、疾病が重視されています。


おそらく、船上の生活では怪我を原因として病気になりやすいというのがあるのでしょう。


そのあたりは推測するしかありませんが、船員保険法は、職務上、職務上以外ともに疾病が重視されていることがわかります。

まとめ

法律の条文はその道の専門家が作った文章です。
一語一語、語句の並び順に意味があります。

もちろん、社労士に出てくる条文すべてをそこまで理解することは必要ないし、無理でしょう。

私は真田アカネ先生と一緒に丸暗記するからいいんだもーん!

ですよね。目的条文は丸暗記で良いと思います。


ただ、そうは言っても社労士試験で覚えるべき条文はたくさんあります。
混同して覚えづらいものは、このように比較して「どんな意味があるのか」を考えてみると覚えやすくなると思います。

社会保険の3大法律の目的が微妙に違っているのも気になるところです。

  • 国民健康保険法の目的が「社会保障及び国民保健の向上」
  • 高齢者医療確保法の目的が「国民保健の向上及び福祉の増進」
  • 介護保険法の目的が「国民の保健医療の向上及び福祉の増進」

これまでの経験からして、おそらくこの違いにも意味があるのですが、いつか解明してみたいです。

今日は以上となります。ここまでお読み下さいましてありがとうございました。

免責事項 この記事の内容は個人が勉強のために調査した内容を記載したものであり、正確性を保証するものではありません。当記事の内容によって生じた損害等の一切の責任を負いかねますので、ご了承ください。
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