障害手当金は、厚生年金保険法で定められている4つの保険給付の一つであるにも関わらず、手薄になりがちです。忘れた頃に出てきて「何だっけ?」となりやすいので、一度復習しておきましょう。
記事の内容
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障害手当金を支給しない条件を復習する
想定する読者
- 1週間前の自分自身(社労士受験生)
- 私と同じような社労士受験生
例題
問題: 「在職老齢年金の仕組みにより支給停止が行われている老齢厚生年金を受給している65歳の者が、障害の程度を定めるべき日において障害手当金に該当する程度の障害の状態になった場合、障害手当金は支給される」。〇か×か?
障害手当金って別に65歳で停止とかなかったよね。老齢厚生年金受給してるくらいだから初診日の要件は大丈夫だろうし、〇かな?
正解は「×」です。
えー、支給停止って、労働基準法とか労災の時だけじゃなかったっけ?
障害手当金の受給権者
まず、厚生年金保険法の条文を復習しましょう。
(障害手当金の受給権者)
第55条 障害手当金は、疾病にかかり、又は負傷し、その傷病に係る初診日において被保険者であつた者が、当該初診日から起算して5年を経過する日までの間におけるその傷病の治つた日において、その傷病により政令で定める程度の障害の状態にある場合に、その者に支給する。
第56条 前条の規定により障害の程度を定めるべき日において次の各号のいずれかに該当する者には、同条の規定にかかわらず、障害手当金を支給しない。
一 年金たる保険給付の受給権者(最後に障害等級に該当する程度の障害の状態(以下この条において「障害状態」という。)に該当しなくなつた日から起算して障害状態に該当することなく3年を経過した障害厚生年金の受給権者(現に障害状態に該当しない者に限る。)を除く。)
二 国民年金法による年金たる給付の受給権者(最後に障害状態に該当しなくなつた日から起算して障害状態に該当することなく3年を経過した障害基礎年金の受給権者(現に障害状態に該当しない者に限る。)その他の政令で定める者を除く。)
三 当該傷病について国家公務員災害補償法、地方公務員災害補償法若しくは同法に基づく条例、公立学校の学校医、学校歯科医及び学校薬剤師の公務災害補償に関する法律若しくは労働基準法第77条の規定による障害補償、労働者災害補償保険法の規定による障害補償給付、複数事業労働者障害給付若しくは障害給付又は船員保険法による障害を支給事由とする給付を受ける権利を有する者
年数が目につきます。
障害手当金をもらえるのはこの人ですね。
- 障害手当金の受給権者 ⇒ 初診日から起算して5年を経過する日までの間におけるその傷病の治った日において、その傷病により政令で定める程度の障害の状態にある場合
障害厚生年金は障害等級3級までありますが、それよりは軽い程度の障害というイメージです。
支給しない条件
問題は支給しない条件です。
先ほどの条文にある通り、障害の程度を定めるべき日に以下に該当する人に障害手当金は支給されません。
- 厚生年金保険法の年金たる保険給付の受給権者
- 国民年金法による年金たる給付の受給権者
- 当該傷病について国家公務員災害補償法や労働基準法等による障害補償、労働者災害補償保険法の規定による障害(補償)等給付等の給付を受ける権利を有する者
他の年金と同時に受給はできないということです。
まあ、よくよく考えてみれば、1人1年金の原則から、65歳未満は「老齢・障害・遺族」の種類をまたがる併給は不可だし、65歳になっても、「障害厚生年金」は「老齢・遺族」と併給することはできません。
障害手当金の併給について問われた時には、障害手当金が一時金だということに惑わされず、まずは障害手当金は障害厚生年金に次ぐ障害への保険給付だということを思い出して下さい。
障害手当金は障害厚生年金に準ずる併給ルールだろうから、他の年金と同時に受けることは出来ないだろう、という想像が現場思考で出来れば大丈夫です。
ただ、「最後に障害状態に該当しなくなつた日から起算して障害状態に該当することなく3年を経過した障害厚生年金の受給権者を除く。」という微妙に複雑なルールもありますね。
障害厚生年金等を受け無くなってから3年過ぎていたら、別の傷病による障害手当金を受け取ることは可能です。
3年も経ったんだから、前の障害厚生年金は昔のことだし!
という、時効のような意味合いかもしれません。
また、労働基準法の障害補償や遺族補償と重なると年金が6年間停止されることは有名ですが、障害手当金の場合には、労災法の給付でも支給が無くなります。
この点では国民年金の「20歳前の傷病による障害基礎年金の支給停止」と似ていますが、あちらは以下の場合に支給停止になっていましたので注意しましょう。
- 恩給法に基づく年金たる給付、労働者災害補償保険法の規定による年金たる給付その他の年金たる給付であつて政令で定めるものを受けることができるとき。
- 刑事施設、労役場その他これらに準ずる施設に拘禁されているとき。
- 少年院その他これに準ずる施設に収容されているとき。
- 日本国内に住所を有しないとき
まとめ
障害手当金は他の厚生年金保険法・国民年金法の年金と併給できません。
ただ、障害等級に該当することなく3年を経過した場合には、別の傷病による障害手当金を受け取ることは可能です。
今日は以上となります。ここまでお読み下さいましてありがとうございました。
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