引き続き、電験三種の過去問を解いていきたいと思います。
今日は電力の誘電体損の問題です。
なお、問題文については、一般財団法人電気技術者試験センターの以下のサイトで公開されている文章を引用します。
問題
【問題】平成27年度第三種電気主任技術者試験 電力科目 問10
問10 電圧66kV,周波数50Hz,こう長5kmの交流三相3線式地中電線路がある。ケーブルの心線1線当たりの静電容量が0.43μF/km,誘電正接が0.03%であるとき,このケーブル心線3線合計の誘電体損の値[W]として,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1)141 (2)294 (3)883 (4)1324 (5)2648
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https://www.shiken.or.jp/answer/index_list.php?exam_type=30
検討
さて、どうでしょうか?
0.43μF/kmっていうからには1キロあたりの量だから、5キロをかければ静電容量が出るよね。周波数もあるからリアクタンスは出そうだし、求める単位は「W」だからリアクタンスと電圧使えばそれらしい値にならないかな? 誘電正接ってのはよくわからないけど……
とりあえずこの問題では明らかに「誘電正接が0.03%」を使いそうですから、言葉を知らないと難しいですよね。
さて、そもそも誘電体損というのは何でしょうか。
誘電体損(誘電体損失)とは、ケーブルに交流電流を流した時に発生する損失の一つです。
損失がなければエネルギーは100%伝わりますが、現実的にはそうはいかないわけです。
一般的に、高周波であればあるほど、また、誘電率が高いほど、誘電体損失は大きくなります。
なお、損失には、誘電体損のほかに抵抗損やシース損があるようですが、今日のところは割愛します(まだ説明できるほど知りません)。重要であればそのうちまた登場するでしょう。
解答
結論を言うと、電圧を\(E\),周波数を\(f\),静電容量を\(C\),誘電正接を\(\tan \delta\)とすると、三層合計の誘電体損\(W_{d}\)は、以下の通りになります。
$$W_{d} = 2 \pi f C E^{2} \tan \delta$$
この式のうち、\(2 \pi f C\)の部分はコンデンサーのサセプタンスですね。
サセプタンス?
サセプタンスはリアクタンスの逆数です。
リアクタンスの逆数に\(E^{2}\)をかけていますので、電力っぽいものになっていることがわかると思います。一線当たりの場合\(1/3\)になるのですが、三相合計すると3がキャンセルされるようです。
さて、問題はそこにかかっている誘電正接\(\tan \delta\)。
理想的な回路の場合、この誘電正接は0になるそうです。
ただ、現実には損失が出るため、その大きさをこの誘電正接で表現しているのでしょうね。
この問題では「0.03%」と与えられていますので、素直に代入すれば大丈夫です。
ということで、計算してみましょう。
まずは静電容量ですが、
$$0.43 \times 10^{-6} \times 5 = 2.15 \times 10^{-6} [F]$$
ということで、誘電体損は、先ほどの式にそれぞれの値を代入して計算すると、
$$W_{d} = 2 \pi \times 50 \times 2.15 \times 10^{-6} \times (66 \times 10^{3})^{2} \times 0.0003 = 883 [W]$$
となります。
- 解答:3
今日は以上となります。ここまでお読み下さりありがとうございました。
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